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ヘイトとたたかう〜川崎でのとりくみ 片柳すすむ・前川崎市議インタビュー
ヘイトとたたかう 川崎・神奈川での市民と共産党のとりくみ
後編~共産党はどう動いたのか
【動画はこちら】
外国人を差別したり排斥しようとする排外主義にどう立ち向かうのか、国際的な課題ですが日本でも大きな問題になっています。
神奈川県内においても特定の民族 国籍 人種など個人の意思では変えることのできない属性を持つ集団に対する差別憎悪を煽るヘイトスピーチが繰り返し行われてきました。
それに対し
2016年国会ではヘイトスピーチ解消法が成立
2019年川崎市では全国で初めて刑事罰を伴うヘイトスピーチを禁止する規定を持った条例
が制定されました。
ここでは、前編後編に分けて川崎での差別に立ち向かうたたかいを中心に取り上げ、その中で日本共産党が共生社会をどう実現しようとしているのか、お届けします。
後編では「ヘイトスピーチをなくすために日本共産党はどう動いたのか」を取り上げます。
初めに、片柳すすむ・前川崎市議へのインタビューです。
片柳すすむ・前川崎市議へのインタビュー
2013年ごろからの共産党の取り組み
あさか:よろしくお願いします。
新大久保に続いて川崎駅でもヘイトスピーチが行われるようになって
2015年、2016年桜本がこのターゲットにされる、その時地域の共産党としてこれにどう向き合ってきたのかをお聞きします。
片柳:
2013年12月に私が市議候補になりました。その時には駅前でいわゆるヘイトデモがガンガンやられる状況でした。僕が最初にヘイトデモの反対行動みたいなことをしたのが2014年7月、その直前にアンチファシズムの人たち、青年のグループの何人かが「暮らしの相談センター」私の前の宮原春夫市議会議員の事務所に来て共産党さんもヘイトスピーチに反対してほしい、という要請がありました。
それで様子を見ることも含めて最初初めて街頭に立ちまして、それで本当にこれは共産党としてやらなきゃいけないと街中でこんな酷い在日コリアンの人たちを罵るようなことがあってはならないということで。
ですから、最初は個人として立ってそれ以降2014年のその次、おそらく12月とか。
その後に党の中でもちゃんと議論をして、共産党としては政策としてヘイトスピーチの項目がちゃんとあったので、そのヘイトスピーチに反対のできる行動をちゃんとやろうじゃないかっていう議論をして、共産党として旗を立ててやろうと。
カウンターの人たちは、ヘイトスピーチの目の前とかすぐ近くでやってるけれども、ちょっと離れて共産党しかできないことをちゃんとやろう、そういう相談をしてやるようになりました。
今あさかさんからあった2015年11月からは桜本がターゲットにされて、これはもう本当に許せない中の許せない、在日コリアンの人たちが住んでいるところにヘイトスピーチの矛先を向かうということで、これは絶対に許されないということで、
共産党の中でもみんなで相談して、街中にもヘイトスピーチ許さないという黄色い法務省のポスターをたくさん、色んなところにも貼って、党の支部の人たちもその周辺の地域、それ以外の人たちも色んな各地に散らばってそのヘイトスピーチの来るところに行って反対の声を上げるということをやりました。
ここに向き合うやり方の一つとして、そういうヘイトスピーチが駅前にも来る、桜本にも来るとなった時に、私たちより前に在日コリアンの皆さんにずっと寄り添って活動してきた先輩というか市民運動をずっとやられてる地域に根付いてる人たちから、「共産党さんが最初に政党として反対してくれた、ヘイトスピーチの目の前に立ってくれた」そこも評価してくれて、
これから市民ネットワークというのを作りたいんだという相談を私たちにもしてくれて、ぜひ、それも超党派でやりたいから一緒に取り組んでほしいと、そういう要望があってそこで私たちもその超党派の中で一緒に協働してやっていく、それがとてもざっくりとした、この時期の共産党の取り組み方という感じですかね。
あさか:
私も初めて桜本にデモが来るっていう時に行きましたが、現場に行くってすごい大事だなっていうのは思いましたね。絶対にこれ許せないって思ったし、同時にすごい怖さも感じました。
ターゲットにされることの怖さも含めて、絶対許せないっていうのは、やはり現場に行って見たからこそ感じたことだなと思いました。
桜本でも川崎駅でも、たくさんの人が市民が抗議の声を上げるために集まっている。片柳さんも後藤さん(川崎市議)(註*この後インタビューしています)も現場に駆けつけていく。そこで、どういうことを、具体的にしてきたのでしょうか。
カウンターとの違い、共産党にしかできないこと
片柳:
さきっと同じことになりますが、共産党にしかできないこと、議員や候補者だからできること、それをちゃんとやるのが必要だよねっていうのが私たちが川崎の共産党でやってきた理論です。
だからいわゆる目の前でヘイトスピーチ反対よりもっと強い言葉でいろいろ言う(カウンターの)人たち、それはその役目があるんですよね。もう絶対許しちゃいけないですよヘイトスピーチは。
その場に、駅前でも特に桜本なんかに行ったら、その場に住民がいるわけですよね、聞かせちゃいけないっていうね。それをカウンターの人たちがそんなふざけたこと言うなって、怒りを持って言うから、そうだよそれは許せないんだよっていうふうに住民の方が自分の中で落とし込めるわけですね。
そうじゃなかったらやっぱり、内面化しちゃうんですよね、やっぱり自分たちは差別されちゃうものなんだと思わざるを得なくさせるのを、「かき消す」という大事な役割があるんですけど
共産党がそこに立つことはそういう立場ではない。共産党がやるのは例えば駅前だったらそのカウンターの人とヘイトスピーチの集団の人たちがやり合ってるのを見て「あれは何なんだろう」ってなってる人に、「あれはこういうこと」だと、私たち共産党はそういう差別は許さないと言ってるんだと。
あそこにいる人たちは前にはこんなひどいことも言ったことがある、桜本にまで行ってこういうこともやったことがある、それを僕らは冷静に広く。駅の前だからたくさん人が通るわけで、そういう人たちに今こうなっている、その中で僕たち共産党はこういう立場でヘイトスピーチは許さないっていうのをやっている。
僕たちのすぐ横には市民ネットワークの人たちが、また僕らとは違う幅広い人たちと一緒にヘイトスピーチやめろって言っている。
僕らはそれを共産党の上りを立てて、やっぱり一つの政党・公党がこれはこれで許さないと言ってるよと。ヘイトスピーチはダメだっていうのを大事にしてるっていうのが一つですね、
訴えている中身は共産党としてのヘイトスピーチ反対の政策、この間あさかさんが動画も作ってバッチリ言ってくれたあれとか、あと市議会で共産党がやってきたこと、そういうことをやっているというのが一つと。
桜本のときに共産党としてやったこと
もう1つ桜本の時にどういうことをやったのか、桜本ではヘイトスピーチをする人たちが駅に近いところからずっとデモをして、桜本を通って川崎大師まで行く。
地理感のない人にはちょっと難しいですけど、相当長距離を通って在日コリアンの人たちがたくさん住んでる地域を通ってそっちに行くっていうことがやられたんですよね。
僕はその時は議員になった直後だったんで、まだそんなに知名度はないんだけど、それでも少しはポスターとか見て知ってる人がいる立場として、「これからこういう人たちが来ますよ」っていうのを、拡声器を持って自転車に積んでその人たちが来るより先回りをして、
「これからあと3分後ぐらいにこれからこういう人たちが来ます」と、それに対して周りで抗議しているのはこういう市民の人たちや私たち共産党の仲間もポスターを持って、ヘイトスピーチ許さないという黄色い法務省のオフィシャルなポスターを持ってやってます、抗議する人たちもたくさん来ます、だけれどもその中心にいるのはヘイトスピーチをやっている人たちなんですと。ぜひ皆さんそういうことをご理解ください、というのをして回りました。
だから全体貫いてるのはね、やっぱり共産党や議員や候補者は、少なくとも公の立場にいて、そういう人たちがこういうことを言ってる、自分たちの、大小はあっても知名度というものを活かして、少しは信頼できる人がちゃんとこの場の状況を説明し、共産党として反対してることを言うことを大事にしてやってきたっていう感じですかね。
あさか:
どっちもどっちじゃないと。ヘイトはダメなんだと。
片柳:
そうです
あさか:
ヘイトに反対している立場の人たちがこれだけいるんですと。ぜひ一緒に声を上げてほしいし、私たちは断固許さない、ということを言っていくんですね。
片柳:
それと同時に、ちょっとややこしいんですけど
法律や川崎市の条例の中では「不当な差別的言動」っていう風にヘイトスピーチの中の一番違法な部分を法律上は定義してるんですよね。
だから共産党の議員や候補者としては、駅前でもそれ以外の場所でも、そういう「不当な差別的言動」を今あの人たちはやってますみたいな断定はしない。過去にこういうポスターを出していましたとかね、上げ足は取られないようにしながら、だけどもこの人たちのやってるのは全体としてはこういう差別なんだってことが見えるように公的に言っていくってことを、大事にしていますね。
2019年ヘイトスピーチ禁止の人権条例制定と植民地支配の歴史
あさか:
川崎市では2019年にヘイトスピーチ禁止する罰則付きの人権条例が、全国で初めて全会派一致で制定されましたよね。共産党はその議会での議論の中で植民地支配の歴史にも触れましたよね。その時の思いをお願いします。
片柳:
その時私も市議会議員で文教委員で、この人権条例の論戦の中心になって共産党としてがんばってやってきました。その中で、植民地支配の歴史に触れないとどうしようもならないという思いもありました。
ただどうしても条例の制定の過程なので一つ一つの言葉をどう定義するのかとかそんなことにもなったんですけど、共産党がちょうどその時、新しい綱領(註:どうすれば希望のある前途をひらくことができるのか、社会を変革していく道はどこにあるのか、日本共産党の考えをまとめた文 https://www.jcp.or.jp/activity/kouryo/)ができた段階で、この綱領の中でも、先ほども話したヘイトスピーチの政策の部分ですが、
「このヘイトスピーチの問題の根本は何か」と。それは侵略戦争の植民地支配の問題が根底にあることだと、そのことをちゃんと言ってるわけですよね。
このとき、自民党が、ヘイトスピーチ人権条例といわれている罰則付きの条例を作る最後の段階で付帯決議というのを出してきたんですよね。
付帯決議とか、質疑の中でも、日本人に対するヘイトスピーチがあったらそれをどうするのか、このことはこの条例の中で決めてないじゃないか、そういう問題が出てきたら後でこの条例に追加してくださいという付帯決議を出してきたんですよ。
もうこれは本当に今言った植民地支配の認識がないものだと私は思ったので、そういう植民地支配の歴史のこともこの中で入れました。なぜこの条例を作ることが必要になったか、誰が標的になったのかっていうのを考えたら、在日コリアンの人たちだっていうのがはっきりしているわけだし、なぜその在日コリアンの人たちが差別されるのか、出て行けって言われるのかと言ったら、それは日本の植民地支配の歴史があるからであって、そのことが分かっていたらね。
法律の中には「立法事実」っていう言葉があって、実際にその法律を作るため作る前提となる事実が必要なわけで、その中に日本人差別なんてことはどこにも出てくる余地がないわけですよね。
さっき出た桜本だとか、駅前でヘイトスピーチヘイトデモで標的になったのは日本人ではないんですよ、全部在日コリアンですよね。なのでどう考えたってこんな付帯決議が出てくる余地はないし、その根本にあるのはこの植民地支配の歴史に対する無理解だと思ったので、その中でこれを入れたということですね。
(議会では)他の党も賛成して付帯決議も含まれてしまうということになったんですが。。。
罰則付きの条例をつくるということ
あさか:
この人権条例は全国で初めて「罰則付き」という条例になりましたけど、この中で共産党が果たした役割はどういうものでしょうか。
片柳:
すごく大変な問題で、私たち共産党の考えていることと、ヘイトスピーチ反対を運動してきた人たちと、やっぱり一つ一つで見たら考え方が違うところもあったりするわけですけど、
僕たちはやっぱり大事にしたのは「憲法の原則」、 表現の自由だとか、適正手続きって言うけれども、罰則付きで、人の発言とかに対して罰則を与えるものを作るわけだから。
何をしたら罰則付きになるのか、何をしたら罰せられるのかっていうことが、全て一個一個はっきりしていない状態で、特に行政の権力として「川崎市」がそういう罰則をつけられるわけだから、曖昧な言葉が残ってたら、もっとまともな言論をした時に、同じように権力が自由に対して迫害ができてしまうみたいなことになったらまずいわけですよ。そういう前例を作るわけにもいかない。
だから一つ一つの言葉を明確にしていくという努力もしていきました。言葉遣いの一つ一つも明確にしたり、最初の素案とかの段階では入っていなかった、罰則を最後につけるときにその直前にもちゃんと審査会を開かなければいけない。開くことになってないじゃないか、ということなんかも言ったんですよね。
あとねその審査会を開くいとまがないときは、いわゆる不当な差別的言動をやったということを市長が認定できる、そういうのもあったんだけど、それもいとまがなければすぐ認定して良いのかって言ったらそうじゃない。極力その開く努力をちゃんとした上で、どうしようもなかったらやってよいとか。
あとはもう一つ一つの言葉でも「著しい侮蔑」とかね。「侮蔑」っていうのは法律用語ではないらしかったので、そこもちゃんとした法律用語にしなさいと。
「侮辱」っていう言葉と「侮辱罪」っていうのがあって、定義がしっかりしてるんだからとか、そういういろんな専門家のアドバイスも受けながら、一つ一つの言葉も憲法の求めるものに合致するようにする。そういう細かい議論もしながらやってきたというのが一つ。
あと共産党の果たした役割っていうことではさっきあさかさんが言った、とにかく現場にずっといたこと。そのヘイトスピーチの現場にいて、何が起こってるのか私たち知ってるし、間近で見てそれは違うだろうって言ってきた。
その日本人差別がどうのとか、他の党の人もそれぞれのことを言っていました。カウンターもひどいことを言ってるじゃないかっていう議論も文教委員会の中であったことがあるけれども、いやあんたたち現場にいたのって言ったら、いなかった方が多かったと、そういうことなんかもあって。
あさか:
現場で何が起きているのかっていうことをちゃんと伝えられるっていうことと、表現の自由を守るっていうことと、何を規制するのかっていうことと、すっごいしっかり議論をしたということは本当に大事だなって思います。
表現の自由を守るということと、ヘイトスピーチをしっかりとやめさせること、両方両立させるっていう。そのためには本当に突き詰めた議論が大事だなと思います。
片柳:
大変ですけど(笑)
いろんな突き詰めた議論を、いろんな場所でいろんな人とやって、時には叱られたりもしながら、でもその結果やっぱりそういう到達点ね、作ることができたので、それは良かったなと思って。
差別のない川崎をつくるために、今後の課題とは
あさか:
最後に、差別のない川崎をつくる上で、今後の課題をお願いします。
片柳:
この条例はやはり力になって、実際今川崎でも、それでも続いている面はあるんですけど、参加する人数は大きく減ったり、回数自体も減ったり、そういうのは一定の前進をしているなというのは思います。
それと同時にネットだったりとか、いま別の都市に矛先が向いているということもあるので、本当にまだ入り口だなと思っているところです。
とにかく全国的に、そういうヘイトスピーチ、差別意識みたいなのものも、あの頃、10年前とかよりも今の方が広がっている。なんというか川崎でなくしていくということだけじゃなくて、全国的に本当に粘り強くたたかっていくしかないし、
公党政党というのは差別に加担しないものなんだっていうのを、僕たち共産党が何よりも例として示していくし、そういう差別を許したら結局他のマジョリティの側も得をするものになるはずがないんだと、そういうことも含めて差別は許さないという社会を作っていく一翼を共産党も担ってがんばっていくしかない思っています。
あさか:
今国際的にも、排外主義が凄まじいですよね。そこを食い止めるためにも、やっぱり連帯を広げていきたいですよね。
今日はどうもありがとうございました。